ルイス・ブニュエル
題名=アンダルシアの犬 1928年 (スペイン)
出演者=シモーヌ・マルイユ/ピエール・バチェフ/ルイス・ブニュエルetc...
「私たちを驚嘆させるものは、
イメージでなければならなかった」
ルイス・ブニュエル 公開禁止令(フィルムアート社)より
ある年のクリスマスを共に過していたブニュエルとダリ(サルバトール)
二人のこんな会話からこの映像作品は生まれました。
ダリ「昨夜、掌をうようよしている蟻の夢を見たんだ」
ブニュエル「なんだって?私は誰かの眼球を切った夢を見たんだ」
・・・普通クリスマスイヴに二人揃ってこんな夢見るかな・・・
それから、彼らは六日間でシナリオを書き上げたんだそうです。
限りなく夢に近い映像、常識的な繋がりを極力排除した映像のコラージュ
実にこれが、かなり深いところでの人間の本質を暴露しているんだと思うんですよ。
しかし、このお二人は、この夢のような映像を覚醒した状態でつくり上げたのです・・・・・
ゆえに、解釈がもっとも困難なフィルムである。
と同時に、感じたままに感じればいいという単純なフィルムでもあるわけです。
だから、何の先入観もなく、ただ映像に身をまかせていればいいのです。
観終わった後の感想が、「何か変な感じ」でも「何かいい感じ」とかで全然良いのである。
ああ〜っ!この感じ分かる〜!って実生活でもよくあるじゃないですか。
そんな感覚で観る映像なんだと思いました。
まぁ、それにしたって、このお二人のイメージの連想ゲームはただ事じゃないですね。
ここまで、非日常的な映像を連発されると、どうしたって精神分析的な意味付けをしたくなるのが人情ってもんです!
深読みしたくなるんですよね。
でもそれをすると、限りなく混乱して行くんです。ラビリンスに突入するんです。
当時、検閲に引っかかったシーンとしては、
ある青年が自分の足元のあるロープを引っぱりながら、ある娘を襲おうとするシーンで、(どういったシュチュエイション?)そのロープの先から二台のグランドピアノ(ロバの屍付)数珠繋ぎに二人の僧侶が引きずられて出てくるのですが、このふたりの僧侶(司祭)が引きずられるシーンがカットされたんだそうです。
当初は上映の打ち切りとかあったらしいのですが、結局「ステュディオ28」という所で8ヵ月間上映されました。
その間、失神する者あり、流産する者あり・・・警察官による30回以上の摘発等、色々あったんだそうです。
無いわけ無いですよね。
時代を見てもお解かりの通り1928年、日本の年号でいったら昭和3年です。翌年世界大恐慌なんですよ〜!
第二次世界大戦の約10年前なんです!まだ、ヒトラーもナチスも台頭してないんです!
しかし、そう考えてみると、つくづく思いますね、
本物って色あせないものなんだなーって
2005/11/10up